みなさまの大切な思い出がいつまでも色あせないように、わたしたちがお手伝いいたします。



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ReBorn60「今を楽しむ姿一枚に」

平尾伸也(ふぉとあとりえにしかわ・明日香村)

 私たち奈良県写真師会は県内33店の写真館からなる協同組合です。お宮参り、七五三、成人式など、人生の節目(節目)で思い出に残る一枚をお撮りしています。
 当会では令和2年より『ReBorn60』を展開しています。これは、還暦・60代の方を対象にしたキャンペーンで、趣味や特技などを楽しむいきいきとした姿を私たちプロが撮影し、人生第2のスタートを応援しようという企画です。
 今回は『ReBorn60』をテーマに写真のことを伝えたいと思います。
 仲良し友だちの女性5人での還暦写真です。
 きっかけはお客様Nさんのご両親の卒寿と米寿の撮影でした。Nさんの高校時代の同級生の皆さんがその話を聞き、それなら私たちも還暦写真を撮ろうということになったそうです。それぞれが還暦の『赤』をイメージした服装を準備し、仲間の1人は全員分の赤帽子を手作り。小物も自分たちで用意し、まるで高校時代の文化祭を感じさせながら来店されました。撮影の間も皆さん賑やかで楽しそう。撮った写真を見てワイワイ言いながら選んだり、日頃の話や昔話に花を咲かせたり。楽しい時間をご一緒させていただきこちらも嬉しくなりました。
 同級生5人が還暦を迎え、みんなで写真館で写真を撮ろうと思い、予約をしてからの準備、撮影、出来上がりまでを楽しみ合える仲間がいることに大変感動しました。令和3年に開催した『ReBorn60』写真展のテーマ『今を楽しく』を感じる時間でした。今回の出来上がりの写真を見ながら、あの時はこうだったねと会話する姿が目に浮かびます。
 写真はただの1枚の紙かもしれませんが、その写真には撮影に至るまでのたくさんの思いやエピソードも詰まっており、日常の会話のきっかけも秘めていると感じます。
 60代の皆様、家族や友だちと一緒に楽しみながらの1枚を撮影してみませんか!
 『ReBorn60』写真展の作品は当会HPにてWEB写真展として掲載しております。今後巡回展の計画もあります、機会がございましたらぜひご覧ください。

七五三参り「愛情あふれる一枚を」

胡内計孝(コウチフォート・斑鳩町)

 11月になり神社に七五三参りをされる家族連れをよく見かけるようになりました。七五三は諸説ありますが、3歳を「髪置き」、5歳を「袴着」、7歳を「帯解き」の儀とする日本の伝統行事です。男の子は3歳と5歳、女の子は3歳と7歳で健やかな成長をお祝いします。元々は1115日に行われていました。
 お参りや写真撮影のために着物でおめかししたお子様の姿を見ると、赤ちゃんの頃と比べて、そのめざましい成長に感動や喜びを感じられることでしょう。
 私たちも、普段のお子様の何気ない仕草やとびっきりの表情などが捉えられるよう、慣れない場所でとまどってしまいがちなお子様のペースに合わせて、時にはパパやママの力を借りながら、ご家族の思いが溢れる写真づくりを目標にしています。
 特に3歳児さんの撮影は悪戦苦闘することも珍しくありませんが、粘り強く、千載一遇の瞬間が訪れるのをじっくり待ち構えます。今回掲載の写真は、お子様にいろいろと声かけをしていたところ、まわりの大人たちがキュンとなった一瞬の表情をキャッチしたものです。
 写真の描写には「再現」と「表現」があると教わりました。お子様の姿を単に記録する「再現」だけでなく、「表現」のエッセンス、例えばご家族のお子様への溢れんばかりの愛情を写し取れれば、ご家族のとっておきの一枚となるように思います。私は、ご家族が普段通りにお子様と接する姿の中に、たっぷりの愛情を感じます。そのままを捉え素直に表現するために、なるべくお子様に無理をさせず、自然と笑顔のこぼれる雰囲気づくりを心がけています。
 お子様の人生の節目に思い出の詰まった一枚を残していただきたいと思います。
 私たち写真館がお手伝いいたします。

家族写真「記憶や思い出鮮明に 

豊田光昭(光画園・桜井市)

 写真館のお客様の多くは、七五三や成人式など人生の節目での記念撮影で来られる方がほとんどですが、結婚記念日やお子様の誕生日を家族の記念日として、毎年写真館で家族写真を残される方もいらっしゃいます。毎年撮る家族写真なので、かしこまった服装ばかりではなく、普段着や、お子様の制服、趣味のいでたち、ポーズや表情も様々。時には泣き顔の写真も撮影したり、その瞬間を丁寧に写真に残していきます。
 今回紹介する写真は、結婚式から毎年家族写真を20年以上撮影させていただいているご家族のものです。お二人だけの写真から始まり、お子様の誕生で家族が増え賑やかになっていく家族写真を、人生の節目の写真も合わせて撮影させていただいております。
 この写真は10年ほど前に撮影したもので、お父さんの背中に3人のお子さんが乗って、お母さんが後ろで支える何とも微笑ましいポーズ。お父さんの大きな背中にまたがる3人はかわいい盛りで、末っ子さんは足がついていませんでした。
 もう1枚は、一番上のお子さんの成人記念の撮影をしたとき、10年前と同じポーズでとリクエストをいただいて撮った写真です。大きかったお父さんの背中が少し小さく見えますが、必死に子どもたちを支えている表情は思わずクスッとさせてくれる写真になりました。これまで撮りためてきた写真と見比べながら、家族の成長を感じたり、それぞれが思い出話をしてくれたり、和やかな時間となりました。
 お母さんが「時間を遡って撮影できないので、写真でその時々の姿を残してお
くことの大切さを今すごく感じたし、ずっと撮っておいて本当によかった」とし
みじみ仰っていたのが印象的でした。
 写真は、撮ってすぐにはあまり多くのことを感じないかもしれませんが、ふりかえって見た時に、少しずつ薄れている記憶や思い出を鮮明に蘇らせてくれます。そんな写真の不思議な力を多くの方々に感じていただきたいです。
 写真を通じてお客様の人生と深く関わりを持たせていただく写真館の使命として、ご希望に合わせた写真の提供はもちろん、写真で残すことの大切さを伝えながら、お客様に寄り添い、素敵な思い出作りのお手伝いができるようこれからも頑張ってまいります。

証明写真「Do Androids Need an ID photo? 

中村武揚(道馬軒写真館・奈良市)

 今まで「証明写真を一度も撮ったことがない」という方は、ほとんどおられないでしょう。おそらく、皆さんにとって一番身近な写真館のメニューと言えるのが証明写真です。辞書には「人物の真偽を定める根拠となる写真」とありますので、肖像写真(人物の容貌・姿体などをうつしとった写真)とは違い「事務的・機械的に撮影される顔写真」という認識の方も多いのではないでしょうか?しかし実際には「その用途により大きく性質が変わる」という奥深さがあり、特に本人確認の用途だけではない証明写真は、じつは証明写真撮影ボックスのような機械では絶対に撮れない写真であると断言しても良いでしょう。なぜなら、その重要な役割に「為人(ひととなり)を知らしめること」が加わるからです。
 まず、文字通りの「真偽を見定めること」に重きを置いた証明写真の代表格は、パスポートや運転免許証などのように、身分や資格が本人のものであることを証明するために用いられるものです。それらの写真は何より規定に従うことが重要であり、いくら本人が気に入っている写真でも、提出先で受け付けて貰えなければ意味がありません。そのため「真偽を定める根拠として有用であること」を最優先に、顔・髪・服装など全てが適正に整っている写真づくりを心がけ撮影しています。
 次に「為人を知らしめること」も重要な要素となる証明写真といえば、やはり就職活動用のものでしょう。証明写真という縛りの中で、為人をより的確に表現するためには、撮る側と撮られる側のコミュニケーションが(もしかすると肖像写真や記念写真の撮影以上に)必要となります。その一枚が今後の人生を大きく左右するかもしれない重要な写真なのですから、証明写真撮影ボックスなどの機械で簡易に済ませたりせず、コミュニケーションを取りながらきちんと撮影してもらえる人(写真館)を是非探してみてください。そして、なぜ「スマホアプリで過剰に加工した写真」が証明写真として使えないのかをよく理解したうえで、「こんな風に見られたい」「こんな印象を与えたい」など出来るだけ具体的な要望を撮影者に伝える準備をして撮影にお越しください。撮られる側の意識も変われば、バラエティ豊かで個性溢れる就活証明写真が普通になる日が来るかもしれません。
 ところで近年、入国ビザなど人物の真偽判定用証明写真の規定がより細かなものとなり、個人を「人物」ではなく「物体」としてAIに監視させるための要素が非常に強くなってきています。安全で安心な社会を維持するためのセキュリティは大切ですが、それが監視社会化の方向へ進んでしまえば、行き着く先は「個人の特定=個体識別信号」「為人=AI信用スコア」なんてことになり、証明写真も一切必要無くなってしまうかもしれません。そんな人間味のない不気味な世界にしないために、写真館には何が出来るのだろう?…と考えていたら、ひとまず個性的な運転免許証用証明写真の「ぎりぎりセーフライン」を、自身の免許更新で見極めてみたくなりました。はてさて、結果や如何に?!

卒業アルバム「元気を生み出す力に」 

東 靖(あづまフォトスタジオ・広陵町)

 写真館の仕事で「卒業」と言えば、まず思い浮かぶのは卒業アルバムではないでしょうか?
 言うまでもなく、卒業アルバムは学校生活の様々なシーンを1冊にギュッと凝縮したものです。ページをめくれば、いろいろなことが思い出されることでしょう。
 撮影をしていると、写るのが好きでとにかくアピールしてくる子がいれば、写真がちょっと苦手でカメラから逃げ回る子もいたり。本当にいろいろなタイプの児童・生徒さんの写真を1冊にまとめる作業はなかなか大変です。
 この写真は、小学校の卒業アルバム用に撮影したものです。小学生と言えばランドセル。入学した頃は背負わされているような、それもあって1年生のかわいさを引き立てる存在でもありました。それが、ついに6年の歳月が経って、役目を終えようとしている。ずっと大切にしてきたランドセルだけれども、この先もずっと残す人はほとんどいないでしょう。
 だから、写真で残しておきたい、と思うのです。

 6年間ずっと一緒だったランドセルとの写真を
 6年間通った小学校で撮る。
 小学校での思い出がぎゅっと詰まった一枚だと思います。

 どんなに大切にしてきたものでも、寿命がくる、役割を終える、そういう瞬間はいずれ訪れるでしょう。そのことを寂しく、残念に、でも愛おしく思う気持ちから、人は写真を残すのかもしれません。
 スマホで気軽にパシャパシャと写真を撮るのが当たり前の時代になりました。写真がぐっと身近なものになるのはとてもいいことだと思います。みんな写真が好きなんだなあと思うと、写真を仕事にしている者としてとても嬉しい気持ちになります。けれども、プリントなどアナログに変換する人は随分少なくなりました。
 時代の流れと言えばその通りなのですが、特に大切な写真はぜひプリントして飾ったり、すぐ手が届くところに置いてほしいと思います。ふと目に入るとか、ついページをめくって眺めてしまうといった偶然(のようなもの)が心を温かくすると思うのです。
 卒業アルバムも、いつでも手に取ることができるような場所に置いてもらいたいです。一度パラパラっと目を通しておしまい、にならないような、つい何回も見てしまうようなアルバムを作りたい。
これからの長い人生、いろんな壁にぶち当たって落ち込むことがあるかもしれません。そんなときに、まだ無邪気で幼かった自分の、笑顔いっぱいの写真を見れば、当時の自分が応援してくれている、今の自分と繋がっている、と少しは元気になれるかもしれません。
 ページを開けばそっと背中を押してくれる、そんな卒業アルバムをこれからもお届けしたいと思っています。

4月、桜が咲きました。「さあ、始めよう。」 

島田雅央(スミレ写真館・橿原市)

 待ちに待った春がやってきました。春といえば桜、何か心がウキウキします。思わずかけてみたくなります。当店の近くの川沿いに実に美しい桜並木があります。桜には人を幸せにしてくれる不思議な力があります。スタジオの中では緊張していた子どもも外へ出ればのびのび・・・大きなランドセルを背負い、ちょっと大きめの制服を着て元気にカメラの前でしっかり両足を踏みしめる可愛い姿にご両親はハラハラしつつも目を細めます。あんなに写されるのを嫌がってた子が・・・
 私は子どもの目線までしゃがんで話しかけ、自由にしてもらい写される事を楽しんでもらうよう務めます。子どもの自ら動く姿のフォルム、当たる光、背景、そして表情をスナップして行きます。これはスタジオ撮影も同じです。でも、なかなか表情の出ない子もいますが無理に笑わせる事はしません。笑顔はパパ、ママへの専売特許で、他人には見せないその子の精一杯の表情だからです。実に愛しい、笑顔に勝る表情と思います。あの時あんなに泣いていた子が、今はあんなに笑っている。それが成長。写真を並べた時、実に愛しいのは泣いた写真。そこにはパパ、ママの大きな愛情が感じられるからです。写ってはいないけれど写真から感じられるものを写すのが我々の仕事と思います。そこには写す側の愛情が全てです。10年、20年たって写真を見た時、あの時の撮影楽しかったなぁ、あのおっちゃん面白かったなぁ、風が吹いてて寒かったなぁ、空が真っ青やったなぁ、桜吹雪きれいやったなぁ。その全てを思い出せる写真が思い出の1枚。
 今やデジカメ、スマホで簡単に、美しく誰でも撮れる時代にわざわざ写真館に足を運んで下さるのはなぜか、それは我々写真屋でなければいけない理由があるからだと思います。その答えが何であるか常に忘れずこれからも心に残る写真を撮り続けていきたいです。

ロケーション撮影「幸せな”今日”を”記念日”に」 

麹谷 展(小路谷写真館・奈良市)

 七五三や入学・卒業といった人生の記念写真。資格試験や就職等のエントリーの証明写真、或いはご家族の記念日等に定期的に家族写真を撮られる方。写真館に足を運んでいただくお客様は実に様々なニーズがございます。
 今回は、スタジオ内の撮影ではなく季節を感じる「今」を撮影したいとのご依頼であったロケーションフォトをご紹介したいと思います。
 木々の若葉と、眩しい太陽のコントラストが色鮮やかなある日、ご家族揃ってのお出かけされたその一幕。新緑の景色の中、楽しく過ごすワンシーンを切り取り、写真へと残す。ロケ撮影場所はお客様のご要望であったり、私共がご紹介した場所であったりと、様々ではありますが撮影者にとってはその日の天候・時間・そして撮影場所の混雑具合等、様々な要因を想定し、急な天候変化等にもその場で対応する必要があり、タフですが大変やりがいのある撮影となります。
 少々話が脱線しますが、昨今では「モノを売るよりコトを売る」がお客様のニーズとして重視されていると聞きます。このロケーションフォトは散策やご家族で過ごす一時の「コト」とその思い出の写真という「モノ」を共に持ち帰っていただき、撮影した日の記憶はご依頼者にとっての記念日になる。そんな一粒で二度も三度もおいしいサービスかもしれません。
 子供達が草原で元気一杯に走り、木漏れ日の中を散策し、少し開けた場所で一休み。そんな日常を、少し構図を変えた演出で映画のワンシーンの様に。この記事を読んで下さっている貴方様の今この瞬間も、時の流れが等しく過去として押し流していきます。日常の中にも幸せを感じる一幕はあります。私達の仕事が、そんな色褪せない思い出を残す一助になれば幸いです。
 幸せな今、その記憶を記録し、未来に残す。
 全ての写真業に携わる者の使命だと考えておりますが、科学技術の発展に伴い専売特許ではなくなりました。スマートフォンでも簡単に撮ることが出来るようになった時代、お出かけの際は日常の「今」を、季節を感じる様に撮ってみませんか?後で見返してみると、何気ない日常がちょっとした「記念日」へと変わるかもしれません。

結婚式撮影を通して伝えたいこと「プリントすることに価値」 

松山圭佑(プロフォートミドリ・奈良市)

 この仕事をしているとお宮参りや七五三、入学式や結婚式など色々な人の節目に立ち会わせていただく機会が多いのですが、とりわけ結婚式はやはり人生における最大のイベントの1つといっても過言ではないでしょう。
 6月、「ジューンブライド」ということで、今回は結婚式の撮影についてお話していきたいと思います。そもそも「ジューンブライド」とは古代ローマの神様が結婚した月が6月ということから、主に西洋で作り上げられた文化です(所説有)。日本でも一時盛り上がりを見せましたが、そもそも梅雨真っ盛りの時期のため「ジューンブライド」という単語だけが独り歩きをし、あまり根付かなかった印象を受けます。
 さて、ここ数年はスマートフォンの進化やネットワーク技術の進歩により、写真は主に「データで見るもの」として普及しています。無論、私自身もプライベートの写真はデータで楽しんでいる一人です。このような流れに沿って、スタジオ撮影や結婚式撮影においても、「写真はデータで受け取ることが出来るか」というニーズの高まりを感じます。そしてそれはスタジオ撮影と比較して結婚式撮影の方が顕著であると感じています。
 確かに、データで保存すれば手軽に思い出を振り返ることができ、離れた人々とも簡単に共有できる素晴らしいメリットがあります。また、テレビをはじめとする画面で映し出せば、プリントした写真よりも大きな画面で、そして大人数で楽しむことが可能です。これらのように、データでの写真は多数の良い点がありますが、私は特に結婚式の写真についてはプリントした写真がデータと同等の価値、いやそれ以上の価値を持っていると考えています。
 例えば、帰省した際に「この前大掃除をしていたらこんな写真が出てきたのよ」と満面の笑みで写真を持ってくる母親。台紙を開くと少し緊張した表情の父親と母親。そこから始まるのは「そうそう、この時はね~」といった結婚式の思い出話。こんな体験をした方は多いのではないでしょうか。そして、この時間はとても愛おしい時間であり、貴重なものであると私は思います。
 もちろん、データの写真で同様の体験が出来ないとは言いません。「この前パソコンのデータ整理をしていたらこんな写真が出てきたんだよ」なんて話も最近ではよく聞く話ではあります。ただ、プリントした写真と大きく異なる点は「台紙を開く」という点にあります。このひと手間で得られるものは、プリントした写真ならではの魅力です。こういった文化を後世に残していくためにも、結婚式の写真をデータのみではなくプリントした写真としても残していただきたいと私は毎回、お客様へお話をします。
 近年のデータでの納品対応をはじめとして、私達写真館は時代の流れやお客様のニーズの変化に合わせて新しい提案を行うことが必要不可欠です。しかしながら、まだまだプリントした写真には特有の価値があると私は考えています。
 そして、中でも結婚式は人生の一大イベントであるため、データと共にプリントでの写真も是非残していただきたいのです。私はプリントした写真の素晴らしさと重要性、そしてそれが「写真」以上の価値を持つことをお客様に伝えていきたいと考えています。

アサガオの思い出「日常を見つめ、発見する」 

杉本奈穂(西大寺フォト・奈良市)

 写真館が撮る写真といえば、大抵の方は千歳飴を手にした七五三や、振袖や袴姿の新成人の晴れ姿を想像するのではないだろうか?
実際、写真館を訪れると店内やウィンドウにそういった写真が飾られている事も珍しくはない。
 しかしこういった記念日の撮影だけではなく、地域の学校のカメラマンとしての活動も並行して行っている写真館も多い。
かくいう私もその一人で、今年度の卒業アルバム作成に向けて6年生を中心に校内風景の撮影を進めている所だ。
 ところで、皆さんは小学生の頃に育てていたアサガオについて覚えているだろうか?計画性の無い小学一年生だった私は夏休み前に大量の荷物と共にアサガオを抱えて汗だくになりながら通学路を帰ったことを覚えている。
 だが、アサガオを育てていた鉢の色や、6歳の頃の私と比べた時の大きさはすっかりと記憶から抜け落ちて思い出せない。当然写真にも残していなかったので、二度とあのアサガオを見る事はできない。はっきり言って教育の一環で育てた植物に拘る必要性は皆無だ。とはいえ、あの夏の日のアサガオにしかない思い出があるのも事実だろう。
 人生は毎日が劇的な物語で彩られたり、特別な記念日に溢れているわけでもない。しかし、そんな日常の何気ない物事の一つ一つにかけがえのない思い出や歴史が宿っていて、そこに気付き、それらを最高の形で残す。その為の技術を研鑽するのが写真館の在り方だと私は思っている。

残そう!今の瞬間を「初の浴衣姿、1歳のポーズ」 

竹林伸晃(竹林呉服店写真室・橿原市)

 今年の夏は、猛暑日が多くうだるような暑さが続いています。花火大会や夏祭りなど各地でのイベントも活発に行われるようになりました。
 掲載の写真は1歳になり初めての浴衣姿を撮影したものです。数種類の浴衣と帯の組み合わせを試着し白地の浴衣と赤い兵児帯に決まりました。
 浴衣を着てしばらくすると、長い袖を気にして少し機嫌が悪くなりましたが周りの人が声をかけあやすうちに徐々にいつもの笑顔が戻ってきました。撮影が始まると自分の動きに合わせてシャッター音が聞こえることに興味を持ったようで、いろんなポーズをしてくれました。
 この一瞬の変化がシャッターチャンスです。素早く変わる動きを撮ろうと集中しました。
 まだ言葉は話せませんが、ママやパパの気持ちが通じたのでしょう。かわいい姿をたくさん撮ることが出来ました。
 本人の記憶に残ることがほぼ無いであろう1歳という時期に、初めて浴衣を着ている写真を残す。健やかに成長していく過程で、後にこの写真を見て何かを感じてくれたら嬉しいです。
 写真は、当時の場面が広がり心を豊かにしてくれます。これからもお客様に寄り添い大切にしていただける写真作りを目指して行きたいと思います。

人生の大先輩へ「感謝と敬老のお祝いを」 

井原絹子(あさひフォトスタジオ・生駒市)

 多年にわたり社会につくしてきたご老人を敬愛し、長寿を祝う「敬老の日」が近づいてきました。今年はどのようにお祝いし、感謝の気持ちを伝えようかと考えている方、写真館で日頃の感謝の気持ちを表現してはいかがでしょうか。大切な思い出の1つとなることでしょう。
 写真館は初宮参り、七五三、成人はもとより、還暦や金婚式など、人生のお祝い事にも幅広くご利用いただいています。
 こちらの大家族さんは色んなシーンでご利用いただいており、この写真は傘寿のお祝いでご来館いただいた時のものです。主役のおじい様から曾孫さんまでお揃いのTシャツを作って、家族間の楽しいお祝いムードの中撮影させていただきました。たくさんの笑顔に囲まれ、キメ顔ではありますが嬉しそうな表情が印象的でした。
 その後、他界されたとの知らせがありました。たくさんの方がこの写真を見て、ご活躍された話に花が咲いたとお聞きしました。撮っておいてよかったともおっしゃっていました。私たちもお世話になったことや、柔和な人柄を思い出します。
 写真には人の記憶を鮮やかによみがえらせ、仲間や家族と当時の気持ちや雰囲気を共有できる力があると感じています。
 写真館に足を運んでくださる方々と共に、大切なを感じられる写真をこれからも作っていきたいです。